1994.1.1
日本分析化学会関東支部
関 東 支 部 ニ ュ ー ス
No.4
□□□ 見学会参加の薦め □□□
関東支部ニュースの巻頭言を書くように依頼されたが、関東支部に関連したことを書くのがよろしいかと思い、近頃時々参加させていただいている見学会について触れてみる。
現在は本支部と中部支部共催の他、分析化学討論会の際行われる見学会がある。以前は分析化学会に年会の際にも開催されていたし、研究懇談会でも実施したことがある。この他、日本化学会でも各種見学会が催された。
これらのうち何回かは参加したので、それらについての感想を簡単に述べると、我々が使用している機器類の製造会社などへ行き製造工程を見たり、鉄鋼や非鉄の精錬を見学することは、研究や教育に役立つことがあるのはすぐに御理解いただけると思うが、
研究・教育に直接役立たずとも、強い印象を受け雑学の一端ともなり、後に何等か役立ったりすることもあるものである。例えば、製鉄所の圧延による鋼板製造は、規模の大きいことと共に豪快な工程に息を飲む思いがした。
銅の精錬所では、電解精錬の工場で電解槽が先端が霞む位沢山並んで居るのに驚いたものである。初めてトランジスタ等の工場を見学した時は、空気の清浄化と、ミクロ工作の精度に感心した。又、釧路の鶴公園に行った時、特別に園長さんが自身で案内して下さったが、
その時鶴の卵が孵る前に園長さんの呼び掛けに答えると云う話など、鶴に対する園長さんの愛情と共に生物の成長と教育に関して強い印象を受けた。
見学会はこの他、参加者が親しくなれると云う利点があり、懇親の意味も大きい。他の分野の人とも親しくなることは大切なことであるので、若い会員の方、特に学生諸君にレクリエーションも兼ねたつもりで参加されることをお薦めする。
近頃見学会が漸減の傾向にあるが、学会の方の企画・準備・世話の労力に対し、参加者が少数で、苦労が報われない場合が多くなってきた為ではないであろうか。学生諸君は実社会に出ると見学は仕難くなってしまうので、
学会の見学会を利用して今のうちに多くの工場見学をされることをお薦めする。
一方学会側も、学生には参加費を割引くなど、負担の減少を考えては如何であろうか。又、企画をたてる時、一般の見学とは異なる学会ならではの見学を計画していただく。会社や研究所の見学なら云わずもがなであるが、
例えば普通に行けば単なる観光旅行になってしまうようなところでも、専門の研究者に火山、温泉、地質、植生、歴史などの話をしていただくと、一般見学とは一味異なった興味ある見学会になる。このようなことは今迄も考慮されていたが、
このことをもっと強調して希望者を募集しては如何であろうか。幹事や委員の方々にはお骨折りのことではあるが、今後も有益な楽しい見学会を立案して下さることを期待している。
1977年度支部長 中埜 邦夫
関東支部ニュース第4号 もくじ
見学会参加の薦め
交 流
「第1回東京セミナー」、企画、実行を行って
「第9回パソコンのためのインターフェイス回路実習を終えて」
新潟地区部会の活動について
研究支援産業はどの様に利用たらよいのか
編集後記
交 流
「第1回東京セミナー」、企画、実行を行って
(舞台裏の話を中心に、これからこのような企画を担当させられる方の参考に。この雑文を読めば誰でも分析化学会の企画を担当できるはずです。まだ担当していない方は是非手を上げる準備をして下さい。
また、このような企画を担当していない分析化学会の会員の方の新しい力、考え方に私は期待しています)
平成5年7月23日金曜日の冷夏とはいえ、夏の真っ盛りに日本分析化学会の関東支部の主催する第1回の東京セミナーが開催されました。東京地区で行われる初めての支部講演会であり、参加者がどのくらいか心配しておりましたが、
100名を越える皆様にお集まりいただき、主催者の一人としてほっと胸をなで下ろしました。
今回このセミナーを企画、実行したことを、その舞台裏を中心に報告し、今後の皆様の参考にしていただきたいと思います。
そもそもこのセミナーが発足することになった経緯は、毎年行われている支部講演会(茨城、群馬と栃木、山梨で隔年ごとに開催される)の聴衆を召集することが極めて困難であり、
そのために奔走する支部講演会担当幹事の前向きではない努力と慢性的なストレスのうっ積を背景としております(このような本音を赤裸々に書いて良いものか?ある支部では、講演をされる先生にあまりにも聴衆が少ないという失礼がないように、
単位を餌に学生を半強制的に召集するなどの涙ぐましい努力があったと聞いております。もちろん講演内容に問題があるのではなく、関東の各地区で行う講演会の意義、宣伝・周知の方法にいささかの問題があると考えられます。
現在では関東は言うにおよばず日本の各地への情報の伝達は極めて早くなり、時間的な距離は短縮されており、わざわざ当地へ出向いて講演を行うことの意義を考え直す時期ではないかと思います。支部長が各地区へ出向いて交流することの意義はあると思いますので、
それを講演会として企画するだけではなく、他のかたちで実現することも考えても良いと思います)。それぞれの地区の担当幹事は隔年ではなく、2年おき、できれば3年おきの開催を望んでいたようです。
そしてたまたま93年度の分析化学討論会が関東支部担当で水戸で行われることになり、ちょうどこの年に茨城地区で行われることになっていた支部講演会担当幹事より、討論会との同時開催はできない、93年度の支部溝演会はできれば(絶対)
延期してほしいと強い要望があり、これを支部常任幹事会が了承したわけです。もちろん茨城と同じ年度に講演会を開催する予定の群馬地区も延期に反対する理由は、どこを探しても見つかるはずがなく、茨城、
群馬地区の支部講演会に代わる新しい企画の検討が行われました(92年11月)。その席上関東支部の事務局の田中氏より、現在は東京地区の講演会がない、かつて(1987年高村支部長時の常任幹事会で)東京セミナーの企画が立案されたことがあり、
これをもう一度企画したらどうかという意見が出され、まさか自分にこの役がまわってくることはなかろうと、皆が反対しなかったところで(分析化学会の人使いの荒さといったらひどいもので、何かの企画について意見を出そうものなら、
この仕事の全てが押し付けられることもしばしばで、私などは某T先生から口は災いのもと、沈黙は金、寝る子は育つ(何のことか?)などと言う会議対策を教えられたものです)、この案が採択されたとうわけであります。
これまでの学会の行事はどちらかと言えば大学あるいは国公立の研究所などの研究者を念頭において企画されたものが多い。学会のサービス活動は、学会を支えるもう一つの大きな柱である企業関係者に対しても行われるべきであろうと言う意見が出されました。
これには業界の代表でもある井垣副支部長もこれを強く支持して(私もこれには全面的に賛成で、学会のサービス活動は、なるべく会員のすべてに広くなされるべきで、一部の特定部分に偏るべきでないと思っていました)、
企業の第一線あるいは分析現場で活躍されている会員の方々(実際には学会の宣伝活動の一環として会員外の方も自由に参加できるかたちとした)も参加することに意義を感ずる「東京セミナー」の企画原案が成立しました。
これにかかわる担当者の選出ですが、山崎支部長(92年度の支部長でこの企画の立案責任者)はこのように降って涌いたような新たな仕事を強引に誰かに押し付けることが苦手な性格で、このことを良く知る私どもが(大久保明、北森武彦、
吉村吉博)引き受けざるを得ない状況になってしまいました。この後二、三回の企画会議を行い、テーマを「分析技術の進む道」と決定し、以下の講演を行うこととしました。
1.ニューラルネットワークの利用(物質工研)田辺和俊
2.イメージングプレートの原理と応用(富士写真フィルム)宮原諄二
3.レーザー分析技術の現状と将来(東大工)澤田嗣郎
4.分析化学−外挿としての将来(東大工)合志陽一
講演者は前回の関東支部ニュースでご案内したとおりですが、田辺先生の講演題目に変更がありました。ここで、通常は地区講演会では支部長の講演を行うことが慣例であり、それが主たる目的であるが今回はどうするかと事務局の方から問われました。
前支部長(山崎素直教授)が、講演を頼まれてご苦労されているのを目の当たりにみると、この理由だけで講演をお願いするには申し訳なく思っていましたところ、幸い今回のテーマと合致する題目で合志支部長にご講演がお願いできることになり、
最後の講演で全体を総括する題目で講演していただくことになりました(後に述べますが、このことが当日の講演で、合志先生にはご無理、ご迷惑をかけましたが、主催者にとってたいへん役に立つとは思ってもみませんでした)。参加費は無料としました。
現在分析化学会は本部決算、支部決算共に黒字です。本来学会は利益を追求する団体ではなく、もし大幅な利益がでるのであれば、会員サービス行為の怠慢であり、これが不可能ならば会費を下げるべきであるというのが我々担当者の意見でした(今後、
会員の数の増加が望めないことから、ことさら経費節減が叫ばれ、会員サービスを縮小することでこれを行おうとしているようなケースを耳にしますが、黒字を滅らしても学会の根幹となる事業や会員サービスの質の低下は阻止し、
最後に会費の値上げを会員が賛成しないときに残念ながらこれらを行うというのが本来の姿である、ということを確認しました)。今回のセミナーは会員サービスの一環であり、また会員外の参加についても分析化学会の宣伝の意味も含めて、
特に制限はもうけないことにしました。講演会場も立地条件のよい食糧会館に決め、最後の難関の参加者の人数の予測の問題が残りました。今回行った宣伝活動は、「ぶんせき」のAぺ一ジに案内を出すこと、支部ニュースで知らせること、そして、
関連企業にダイレクトメールを送ることにしました。その結果、開催日の前に約70名の参加申込を受け、なんとかセミナーが成立することを確信して安心しました。さらに7月9日の常任幹事会でご関係の近くの方に声をかけていただくことでだめ押しをしました。
当日、担当幹事は開始時間の30分前に集まり、会場ならびに受付を確認し、進行の打ち含わせを行いました。午後1時、私が開会を宣言し、公務によってやむを得ず運れてくる合志支部長の代理で澤田嗣郎理事に挨拶をお願いし、
ついで講師の先生の講演が順調に行われました。先にも述べたように多くの方々の参加を得て盛況のうちにセミナーは進みましたが、座長(担当者3名)の不手際と活発な質疑応答などのため、ご多分に漏れず予定時間が超過して、
井垣副支部長が座長を行う合志先生の講演時間は約30分しか残されておりませんでした。事務局の田中さんによればこの会場は時間に厳しく、延長などはもってのほか、今後のことを考えて絶対に時間内に終了してほしいとのこと。やむなく、
今回のセミナーの主催責任者である合志支部長に講演時間の短縮をお願いし、なんとか時間内に収めていただきました(合志先生にはたいへん申し訳ないことをしたと幹事一同反省をしております。また合志支部長が最後の講演で助かりました)。
北森幹事が閉会を宣言して、無事終了しました。終了後、近くで支部長、副支部長をまじえて関係者で、反省会(打ち上げ)を行いました。今回のセミナーはたいへんうまくいった、できればこのような企画を続けたいというのが大方の意見でした。
私もこの意見に賛成ですが、この企画が先に述べた支部講演会のように恒例になり、担当幹事が講演者探し、参加者動員に駆け回るようになっては今回企画を担当した幹事の本意ではありません。あくまでこの企画が関東支部が関与する事業のうちの
自由に選択できる企画の対象を広げたことであれば良いことであると思います。そして状況に応じて実行されるという種類の企画として位置づけられれば、他の企画とうまく共存できると思います。また新しい企画は続けるのも、中止するのも自由にして、
悲壮感がただよわない運営が良いと思います。さらに加えるなら、基本的にこは学会の事業は学会の存在意義に関わるもの(会誌、年会など)と真に会員の多く望むものにすることが理想だと思います。おもいきってすべての事業をいったん中断して、
前例にとらわれずにもう一度考え直す頃かとも感じています。
長々と本来の報告とは異質な内容の事業報告をあえて書きましたが、これは事業運営の一例(これが典型ではありませんが)をつつみかくさず紹介し、多くの新しい会員の皆様の学会事業への参加を希望し、新鮮な力、考え方を学会に取り込み(かつて、
「ぶんせき」の編集委員長の鈴木繁喬先生が広く全国の会員の力を結集し、会誌の活性化をはかりたいと、よく言われていたことを思い出します)若い力で学会の活性化をはかりたいと感じているからであります。今後、
少なくとも関東支部の幹事などの役員を推薦する機会がある先生には、学会に新鮮な力を送り込む努力をお願いしたいと思います。また今回のような企画を実行するときには、実行委員として新人を起用することも良いことではないかと考えます。
最後に、今回の「東京セミナー」が多くの皆様のお力添えでなんとか成功でき、幹事一同関係された多くの方々に感謝しております。
東京セミナー担当幹事 東大農・大久保 明
FAX 03-5802-3303(研究室直通)
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「第9回パソコンのためのインターフェイス回路実習を終えて」
先日の広島で行われた日本分析化学会第42年会のとき、川久保先生に関東支部ニュースにパソコンインターフェイス回路実習の件について、宣伝もあわせて書いてはという声をかけていただきました。
関東支部ニュースは私も年会や討論会の時に会場で配布されているのを読ませていただき、関東支部の先生の生の声が拝聴できたように思いました。私もそれを見習って?パソコンインターフェイス回路実習の主催者側としての声を
宣伝かたがた書かせていただこうと筆をとりました。
パソコンインターフェイス回路実習(正確にはパソコンのためのインターフェイス回路実習)は通算すると本年で第9回となりました。関東支部ではあまり馴染みがなかったと思いますが、これは一昨年まで中部支部主催で行っていたためです。
一昨年度、神奈川大学の杉谷先生が関東支部長の時是非関東でもやってみてはどうかとういうことになって、千葉大学の渋川雅美先生にご苦労いただいて昨年度の第8回は関東・中部支部の共催で行うことになったわけです。
当初関東支部では初めて行うこともあり、渋川先生は運営から参加者の募集までかなりご苦労されたようでしたが、会場の東京理科大学の田中先生はじめ皆さんのご協力により盛会に終わりました。本年も昨年に引き続き関東で行いました。会場は交通の便、
実行委員の都合?などにより、去る7月16, 17の両日にわたり星薬科大学で行いました。今年は折りからの不景気風により参加者が果たして集まるのだろうか?という不安もあり、内心かなりひやひやしましたが、この分野におけるニーズは高いようで
ぶんせき誌のお知らせが出るとすぐに問い合わせが来ました。ひやひやする間もなくほぼ定員の参加を得ることができました。
パソコンインターフェイス回路実習のそもそもの目的は先程近べましたように、益々高機能化、インテリジェント化、ブラックボックス化しつつある分析機器において、実際に観測される信号を如何にコンピュータに取り込むかという
インテリジェント化の入り口の部分を何とかしよう、そしてそれが学会会員のニーズであるならできる限り安価にしかも実際に即して、講習会を受講した後すぐに現場で使えるようにという少々欲張りなものです。
パソコンとしては作成するA/D変換基板が機種依存性があることからPC9801シリーズを対象としています。受講なさらなかった多くの方々の参考として実際の講習会の内容をご紹介します。
実習は2日にわたって行われます。第1日目、受講者の方にテキスト(講師の一人である豊橋技術科学大学の加藤正直先生の労作です)、プリント基板(A/D変換ボード)、部品一式が渡されます。まず計測技術の基礎に関する講義から始まります。
現在のインテリジェント型分析装置の構成、パソコンとのインターフェイスをするにはどのような知識と技術が必要か?アナログ信号をどのように符号化するのかなどについての基礎的な部分の講義をします。
次に配布されたプリント基板へ部品を正しくはんだ付けするための電子回路の基礎的知識即ち抵抗のカラーコードの読み方、コンデンサーの種類と使い方、回路図の意味と見方などの実践的な講習が続きます。
これも親切な図入りのテキストで容易に理解されているようでした。
さて“コンピュータ、ソフトなければただの箱”という格言(?!)があるように、たとえ立派な回路ができてもそれを動かすソフトウエアがなければ使えません。作成するA/D変換基板はペリフェラルインターフェイスアダプター(PIA)用IC(μPD71055)を介して
A/D変換IC(AD574)、8系統入力切り替え用IC(DG508)及びサンプル&ホールド用IC(LF398)などを駆動するものなので、ハードウエアを知らずにはソフトウエアが作成できません。
即ちPIAに入出力される信号線の構成とICの使い方、どのようなタイミングでA/D変換するのか?について先程のハードウエアと対比しながら講義します。この部分は機械語、BASIC,C言語で具体例を示しながら説明します。
特にC言語では一度関数を作ってしまえばその後必要に応じて使えますので、是非試みてほしいものです。(ちなみにターボC++は秋葉原で2万円でおつりが来る値段です)
次にいよいよ参加者自身によるはんだ付け作業に移ります。今年、昨年の参加者の約9割がはんだ付けや電子回路設計並びに作成の経験のない方でした。ここでは講師全員と電気科のアルバイト学生の総動員で個別に指導にあたります。
トラブルの多くは抵抗のカラーコードの読み間違え、ICの取付向き、ソケットヘのはんだ上げ(今年はソケットを奮発して丸ピンにしたのでこれはなくなりましたが)でした。早い人は半田付けをはじめて2〜3時間で完成します。
1日目の残りははんだ付け作業と、基板チェックで終わります。
2日目は1日目に引き続き、基板の作成とそれが済んだ人からC言語で作製したテストプログラムとオシレーターによる基板の動作チェックを行います。通常午前中で約8割の受講者が動作チェックを完了します。
これまでほぼ9割の方が動作チェックに1回目で合格しています。ただ今年は基板不良(後からわかりましたが)で最後までチェックした例が一件ありましたが…。ハードウエアが完成し、ソフトウエアの説明も終わればA/D変換基板がすぐに使用できるのです。
次に一人一人がお使いの分析機器との具体的なインターフェイスが問題となります。基板の動作確認の終わった方から自分が使用している機器の出力信号の形式(電流出力なのか?電圧出力なのか?アナログ出力なのか?デジタルか?出力のフルスケールは?など)
がわかる資料を持参していただき個別相談となります。昨年、今年ともガスクロ・液クロなどのクロマトグラフィー機器とのインターフェイスを希望なさる方が多いようです。最近は種々の高機能なソフトウェアが登場し、
特にLotus1-2-3やMS-Windows上で動くExcelなどの表計算プログラムでデータを処理したいという相談も多くありました。また作製したA/D変換器とのレベル調節は別のハードウェア(通常は簡単なレベルシフト回路、増幅器の追加)を必要とする場合は
その回路図などをサポートをします。およそ4時頃にはすべての受講者の技術相談が終わります。
以上のような実習に参加されて、電子回路の食わず嫌いがなくなればそれだけで実習の意義があったかと思います。冒頭でも述べましたが、本実習はできる限り安価にそしてわかりやすく行うことを念頭においています。
参加者の皆さんがご自分で作成されたA/D変換基板も市販品を購入すれば5〜8万円するものですが、これもパターン設計から基板の発注、部品の調達まですべて行っているため安価な参加費用で済みました。
しかし最近のソフトウエアの巨大化に伴うコンピュータの高速化、多様化の勢いはすさまじくそれに伴って本講習会でもソフトウエア講習の比率を増やす必要があるようです。
C言語は先程近べましたように、ライブラリー化が簡単で講習会で作製した基板を利用したソフトのライブラリー化を行おうという計画も名古屋大学の北川邦行先生を中心に検討しています。またこれまでハードウエアで最もトラブルが多く、
時間の最もかかっていたDC-DCコンバータ部分をモジュールIC化すれば2日間の講習でソフトウエアの講習の比率も増やすことができます。プリントパターンの変更にはかなりの金額を要しますので、どのようにすればそのお金がでるかなど頭の痛い問題です。
来年で本会も10回目となります。日進月歩のコンピュータ技術と分析機器、その橋渡しと理解を助けるための本講習会も年々バージョンアップする必要があります。今後どのようなものが必要なのか?
講習はハードウエアよりもソフトを中心とするのか?A/D変換器は会員のニーズに答えているのか?などのご意見を頂戴できればこの上ない幸いと思います。どうぞ宜しくお願い致します。
ご参考までに、講習会で作成するA/D変換器の特性を示しました。
A/D変換基板:
A/D converter: AD574AJD, (15μs, 12bit, 逐次比較型)
アナログ入力:8channel(±5V, ±10V又は0-10Vのジャンパ切り替え)内1channelは50倍アンブ付き
I/O:μPD71055PIA制御(I/O address D8〜DE)
星薬科大・内山一美
連絡先(03-5498-5765)
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新潟地区部会の活動について
分析化学会関東支部新潟地区部会も1981年に発足以来、今年で満12年を迎えることができました。これは、その設立にかかわった者として感慨無量です。会員も県内の大学(理工薬)・官庁・分析機関そして民間企業と幅広い分野からなっており、現在までに、
100名近い会員数になる迄発展しております。部会の活動のひとつとして、会員への情報伝達をはかると同時に、会員相互の意見交換の場を提供するための部会ニュースの発行がありますが、これも発足以来継続しており、目的を十分果たしている。
最近はその中に、会員の研究紹介や職場紹介をのせているが今後はトピック的な話ものせるようにしたいと思っている。なお、地区部会の最大の行事として研究発表会を年1回必ず開催しているが、これは会員の夫々の職場での研究成果を公表する場として考えられたもので、
今年度も約80名の参加者があり、活発な討論がかわされ。これは、会員の今後の研究の更なる発展へとつながるものと確信している。この研究会には研究発表と同時に毎回関東支部長から特別講演をお願いすることになっており、今年度も合志先生から
「分析化学のあり方をめぐって」と題する話をして頂きました。、この題目は分析化学者にとって目下誰しも関心のあることで、その点に於て非常に有意義でした。又、地元の橋本先生は「約50万年前の原始人遺跡確認で使用された熱ルミネッセンス年代測定法の問題点」
の題目で話され、大いに感銘をうけました。先生はこの研究の成果で地元の新聞社の文化賞を頂いております。研究発表会のあとの懇親会も同じ会場で多数の参加者のもとに行われました。新潟県は県全体が大きくて、県内に居ても仲々交換する機会も少ないので、
この点からも大きな収穫があったものと確信しております。
最後に、地区部会の活動にあたって、関東支部からいろいろな形で援助をして頂きましたことを厚く御礼申し上げます。
新潟地区部会会長 新潟大理・鈴木 俊雄
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研究支援産業はどの様に利用たらよいのか
テクノリサーチやリサーチセンター等の名称の研究支援産業が雑誌の広告等で目に付くようになって久しい。「ぶんせき」1993 10の“とびら”に、石谷氏が「日本における研究支援会社−TRCの試み−」と題して、現状を述べているので、ご一読願いたい。
分析技術は、企業における研究の重要な基礎技術であり、そのレベルが企業研究レベルを左右すると言われているため、研究支援産業の活用は、企業の分析担当部門にとっては、日本のコメ輸入の部分自由化と類似した議論になるが、経済性を配慮すれば、
将来的には研究重視の企業がかなりの比率で利用することになると予想している。依頼者の会社にも分析を実施する部署があり、理由があって分析センターへ外注する訳であるが、外注した方が有利なものは、次の要件を満たすものでが考えられる。
1)自社分析技術の範疇を外れる機能を利用する場合。
2)自社になく、分析技術の必要性が3年程度と短い機能を利用する場合。
(事業の多角化を意図した研究で、将来の見通しが不明確な場合)
3)当面、投資する見込みのない高額な施設投資を必要とする機能。
4)自社にない高レベルの技術者を必須とする機能。
5)自社で分析法を開発する必要があり、それが分析センターにある場合に、ノウハウを取得するため。
6)自社技術レベルを確認し、自社分析関係者を活性化させる必要がある場合。
分析センターの立場で日常業務を通じて感じている分析外注の利点を表現すると次のようにまとめられる。
(1) 新事業化研究で、最大の問題点はいかに研究を早く立ち上げるかであるが、最も時間がかかるのが、事業展開に必須な分析・物性測定に関する1セットの評価システム(人材・設備・ノウハウ)の構築である。
分析センターは、技術先行会社からの依頼を処理する過程で最先端の情報を入手し、自社でも努力して、それに適した評価システムを確立している。信頼のおける分析センターが活用出来れば、初期の研究が数倍速まるし、問題解決の為の先を読んだ評価データと、
適切な助言が得られる。
(2) 自社で高価な分析機器を更新することは、この時期大変困難である。外注すれば、問題解決に適した最新・最高の人材・設備で得られた信頼性の高いデータが入手できる。又、信頼性を高めるには違った分析手法のデータによるクロスチェックが必要になり、
自社では困難な場合が多いが、分析センターでは可能である。
(3) 分析センターは装置の稼働率が高いので、測定に無駄がない。組成分析など複数の分析法を組合せる場合には、多くの専門家の同時並行的共同作業が必要であり、分析センターが最も得意とする点である。自社に限られた人材で実施する場合に比し数倍速く、
信頼できる結果が迅速に入手できる。
(4) かなりの労力を使って単離した成分をいざ測定する段階で失敗すると、最初から単離をやり直さなければならないので、時間・経費ロス、依頼者との信頼関係を損ねるなどダメージが大きい。信頼性の高い分析センターに任せると、
測定の失敗が皆無に近いのでリスクが小さい。
(5) 自社データでは客観性・公正さに欠けるため、第3者の測定データが要求される場合がある。普段から、分析センターと懇意にしておき、緊急な場合も無理が利くようにしておくことが大切である。
外注を利用して成功する秘訣は、次の通りである。
a)外注の技術レベルの高いところを選定し、決して、価格で妥協しないこと。
入手レポートの価値がわかる人を参加させ、結果を自社で正しく評価すること。外注の内容に応じて、多数の外注先から最適の会社を選定すること。
b)機密保持契約を結んでも、情報を開示すること。
情報を外注先に隠しては正当な成果は期待できない。情報を要求しない外注先は逆に問題である。見積りの過程で、情報交換しながら、分析センターは分析計画を立案し、何時までに何が出来て何が出来ないか明確に表現し、見積りに反映する。
依頼者はそれにより、どの様な結果がどの程度の価格で得られるかが予想できる。
c)依頼後、途中経過を含めて、連絡を密にし、外注先の専門家と懇意にすること。
分析センターの立場から、依頼のコツを表現したが、ぜひ、依頼者からのコメントを期待したい。
東レリサーチセンター・井垣 浩侑
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編集後記
関東支部ニュースも第4号となり、だんだんスタイルも定着してきました。「スタイル」など申しても、実はそのようなものは初めから想定していないのでして、要は、会員相互の連絡交流に有益そうなものなんでもOKということでスタートしたのでした。
その「何でもOK」ぶりが定着したということであります。そういう意味で本4号も、またまたバラエティーを拡げる好読物ぞろいとなりました。ご意見、内幕ばくろ、近況報告、その他なんでも結構です。皆様の積極的なご投稿を歓迎しております。
ところで本ニュースの配布は、年会や討論会の折に会場受付その他の所に置いて適当に取っていっていただく、という方式でやっています。会員全員にメールを送るというようなことはやっておりません。すべての関東支部会員にキッチリ配布するというのは、
費用もかかり、無駄も出るだろうと判断しているからです。むしろ、他支部の会員でも、軽いニュースとして関心を寄せていただけるケースが多かろうと思って今の方式をとっています。その点よろしくご了承ください。
ただし、何かご意見がありましたら、お寄せくだされば幸いです。参考にさせていただきます。
お問い合わせは下記の編集委員まで、原稿送付は川久保までお願い致します。
編集委員杉谷嘉則(神奈川大)・康 智三(東海大)・川久保 進(山梨大)
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